S15シルビア SR20ターボエンジンオイル漏れ~異音~DIYオーバーホール、修理、高回転対策①

遡ること数か月程前の出来事です。
 
S15シルビアに乗る馴染みのお客さんから、
 
「サーキットでスポーツ走行をしていたらエンジンオイルが漏れてしまって・・・
 
積車でそちらに持っていきますので、点検と修理をお願いします。」という連絡が入りました。
 
 
 
お店にみえられて状況を尋ねたところ、
 
1回10分程度の走行を数回終えてパドックに戻った時に、
 
エンジンオイルクーラーが装着されているフロントバンパーの右付近から
 
ポタポタと滴が垂れていた、ということでした。
 
 
 
 

 
エンジンとオイル廻りがどのような状態になっているのかを探っていきます。
 
 
 
まずはエンジンオイルの量です。ゲージに着かないほど減っていたので、
 
エンジン内の摺動部が傷んでいないか心配です。
 
 
 

 
クーラーコアのフィッティング部に近いところでホースが破断していました。
 
 
 

 
破断の原因は取付方法かホース強度の問題か・・・
 
同じ轍を踏まぬよう圧力強度の高いホースと差し替えます。
 
 
 

 
フィッティングは慎重に締め付けます。
 
 
 

 
組付け ~ 清掃して元通りにします。アイドリングは順調、オイル漏れもありません。
 
これでまた今まで通りに走れるようになったかな?と思い、試走に出かけたところ
 
3000rpm付近からエンジンから異音が聞こえます・・・。
 
「気のせい」であってほしいと思いたいほど、聞き覚えのあるイヤな音です。
 
 
 

 
オーナーさんの要望である「簡単に直ったらいいな~」という言葉と
 
僅かな可能性を信じて異音の原因をヘッド部から探ります。
 
 
 
まずはラッシュアジャスター8個のエア抜きをしますが・・・音に変化なし。
 
 
 
 
 
NVCS(可変バルブタイミング機構)の異音を疑いますが、これは音質が全然違いますからね。
 
念のためスプロケを差し替えて調べますが、こちらも正常でした。
 
 
 

 
カムキャップの傷・・・こちらも少しキレイにしました。
 
 
 

 
カムジャーナル部もきれいでした。
 
ここまで調べたら、もうシリンダー(腰下)部を分解して見るしかないです・・・。
 
 
 

 
ここでオーナーさんと打ち合わせをします。
 
事前に伝えしていたオイル不足による「メタル流れ」をおこしている可能性があるという話。
 
擦り切れているメタルを新品にする必要があるのでは?ということをあらためてお伝えしました。
 
 
 
「ここからはエンジンを降ろして分解して、大掛かりで費用の掛かる作業となります。
 
エンジンの分解と修理作業にチャレンジしてみますか?」というご提案に対して、
 
オーナーさんからは「エンジンOH、初挑戦ですが、やってみます!」という答が返ってきました。
 
 
 
DIYエンジンオーバーホールに取り掛かる前に
 
内部部品の状態は分解しつつオーナーさんと交換、新調を検討するとして、
 
最低限の部品のみリストアップし注文しておきます。
 
納品されるまでの間にエンジンOH関連の書籍を読み予習していただきました。
 
 
 

 
ぼくらは先にエンジン降ろしておきます。
 
 

 
分解準備が出来ました。
 
この辺りからは、ぼくは付添い相談お手伝い役?になります。
 
 
 

 
ヘッドを外したところです。
 
ピストントップの外周に線キズが2本・・・バルブがピストンに当った痕があります。
 
バルブサージングと言って規定回転数を上回るとこのような現象が起こりやすくなります。
 
 
 
バルブスプリングのバネレートを高くすることで避けられますので、
 
組付け時には強化バルブスプリングに変更して対策することになりました。
 
 
 

 
 
シリンダーを分解したところで、今回の異音の原因が分かりました。
 
クランクシャフトとコネクティングロッドの摺動部にあるメタルという半円状の部品があります。
 
正常にオイルが潤滑していれば銀色をしているのですが、薄く削れて銅色に変わっています。
 
摺動部に隙間ができ、音が発生していたということが分かりました。
 
 
 

 
クランクシャフト側にも少し傷が見えました。
 
 
 

 
表面を修正して再使用します。
 
 
 

 
オイルポンプも点検と洗浄だけで「そのまま使いましょう」という話になりました。
 
ピストンリングは、エンジン圧縮に関わるところなので新調することにします。
 
 
 

 
ヘッド部の準備に取り掛かります。
 
交換部品はバルブスプリングとバルブステムシールくらいです。
 
強化バルブスプリングは東名パワードのタイプAシングルを使用しました。
 
 
 

 
…と、その前にバルブシートリングの擦り合わせを本人の希望で施工することに。
 
お気の済むまでやっていただきます。
 
 
 
 
 
ヘッド下部、シリンダー上部の接合面の歪みはほとんどなかったので
 
機械面研せずにオイルストーンで少しなでる程度にしてました。
 
 
 
この後、バルブやリテーナー等、ヘッドパーツ組付けをしておき、
 
シリンダー廻りの組付け作業に移ります。
 
 
続く


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