S15シルビア 走行中に突然エンジンが止まり、その後暫く再始動できない ~ ECUセッティング

メールからのお問い合わせを経てエンジン不調というお話を受け初めてお預かりしましたS15シルビアです。
 
当店をご利用いただきましてありがとうございます。
 
 
 
どのようなお話かと申しますと、
 
昨年9月に中古車購入後の半年間 エンジン停止の不調が続き購入店様にて何度か点検や調査をされたようですが、
 
はっきりとした症状が出ず原因は不明のまま解決には至らず、
 
約半年間まともにドライブへも出かけられない状態とのことでした。
 
 
 
その後、親身に応じてくださるご自宅近所の一般整備工場様から、
 
チューニングカーのトラブルシュートを請け負うお店を探してみる様に促され、
 
当店へお越しくださることとなりました。
 
 
 
安心してロングドライブができ、現在装着されているパーツを生かして
 
さらにコンディション良く走行したいというのがオーナー様のご要望です。
 
 
 
現状をお尋ねしたところ…「走行中に突然エンジンが止まり、その後暫く再始動できなくなる」というものでした。
 
どのようなタイミングで症状が出て、自然回復するかは不確定な為、
 
これが起きると待避場所のない道路ではとても危険で怖い思いをするということです。
 
 
 
お車を購入して間もないため、なるべく費用をかけないように点検、診断するよう試みます。
 
まずは現在のエンジン制御状態と走行時に出る症状の確認から…。
 
 
 

 
エンジン本体はノーマルでターボチャージャーはサイズアップ、
 
それに合わせて燃料の流量をアップし、制御するECUも変更されています。
 
 
 
お預かり直後、エンジンを始動させるとアイドリングは安定していて吹け上がりも正常でした。
 
 
 

 
燃料供給量も疑い燃圧計を取り付けます。
 
点検時にもアイドル燃圧は正常値を指していて良好でした。
 
 
 

 
ECUはフルコンに変更されています。
 
内部は点検程度、見た目は正常ですが動作に関しては疑いを持ちます。
 
各パラメータも見まわしましたがデータ上、特に気になるところはありませんでした。
 
 
 

 
点火コイルはS14用に変更、イグナイターはコイルと別体にストラットに設置されています。
 
一部ハーネスの改変されていることによる不具合を危惧しながらも、
 
「ECU保護のためのハーネス改造、保険作業」の必要性についても配慮します。
 
 
 

 
走行時には常にログを採りつつ、この状態で数日 様子を見てみます。
 
 
 
この時S14シルビアのECUには存在しS15のそれには存在しないもの、という事柄も思い出しました。
 
頭の片隅に置きつつ作業を進めます。
 
 
 

 
ECUデータも読んでますし、全く問題なく走行しています。
 
 
 

 
ログデータも正常です。
 
そろそろ症状が出てほしいところです…。
 
雨天時に出ることが多いと聞いていましたが…。毎日晴天が続きます。
 
 
 

 
雨が降ってきたので試走に出かけたところ・・・ついに症状が出ました。
 
エンジンは停止したものの燃料圧力は掛かっています。
 
燃料ポンプは動作しインジェクターデリバリーまでは
 
燃料が供給されているにもかかわらず・・・エンジンは停止しました。
 
道幅の広い田舎道なので端に寄ってしばらく停車させます。
 
 
 

 
この時ログを採っていたPCにてECUとの通信が途絶えていることが分かりました。
 
通常、キーON時にはログは採れずとも通信が切れることはないので・・・
 
このことでECU動作(電源)落ちと断定して作業を進めます。
 
 
 

 
オーナーさまから伺っていた通り、すぐにエンジンは掛からず、
 
数分間、始動できない状態に陥ります。
 
ECUに異常電流がかかってしまったのでしょうか。
 
 
 
5分程度待ち、エンジンを掛け直すと何事もなかったようにアイドルし、通常走行できるようになりました。
 
仕事をさせ過ぎたPCやスマホの再起動と似た感覚です。
 
その後30分程度走行を続けましたが停止することなく店まで帰還できました。
 
 
 
数日後、オーナーさまのご要望をお聞きした上でECUを交換することが決まりました。
 
動力系アフターパーツは多用され、燃料制御系パーツも変更していることから
 
ECU交換直後の燃料調整は必須です。
 
できれば純正品ECUを装着したかったのですが、
 
後に控える燃料調整等の作業を見越してノーマルECUベースのフルコンを使用することにします。
 
チューニングカーということでしたので、変更箇所のリストアップと他、保全作業を続けます。
 
 
 

 
燃料はなぜかレギュラーガソリンが入っていた?ためハイオクにすべて入れ替えます。
 
 
 

 
燃料ホースがインマニと干渉して劣化も進んでいることからレイアウト変更、ホースは新調することにします。
 
 
 

 
燃圧レギュレーターから突き出していたニップルはエルボ形状のものに変更しクリアランスを確保します。
 
ホースに加えてフィルターも交換しておきました。
 
 
 

 
表記の消えかけているヒューズとリレーの配置図シールも貼替えます。
 
 
 

 
エンジン廻りの点検と測定、調整をしておきます。
 
点火時期は基準値にします。
 
 
 

 
圧縮圧力を測定します。
 
十分な圧縮が取れており、4気筒とも数値がきれいに揃っていました。
 
 
 

 
高出力化されたエンジンに合わないイグニッションプラグを一つ番手を上げてNGKの#7に変更しておきます。
 
 
 

 
固定されていなかったバッテリーにステーを取付してターミナルキルスイッチを装備しました。
 
 
 

 
サージタンクを外しセンサーを追加で取付けます。
 
 
 

 
手持ちのECU(フルコン)に交換して試走準備します。
 
パワーFCから正常なREYTECの中古品にチェンジします。
 
 
 

 
低回転の中負荷までECUデータを仮入力しておきます。
 
とにかく試走で動き回るのに十分なデータを入れただけです。
 
 
 

 
この状態でテスト走行に向かいます。
 
念のため近所で数時間、何日かに分けて試走を繰り返しましたが正常に動作しております。
 
 
 

 
いつも試走時に利用する田舎道に加えて高速道路も走ってみました。
 
何が起きるか分からないので常に左車線を走行していましたが、
 
エンジンストールする様子もなく調子は良いです。
 
症状の発生しやすい雨天時も同様に元気よく走ることができました。
 
大きな原因はECU本体(もしくは改造内容に対応できていないECUの使用…これも語弊があるかな?)ということで解決しました。
 
 
 

 
これにて大きな目的は達成できましたので、ここからはオーナーさまのご要望により、
 
症状を抱えていた期間、正常に動作しているときでも気になっていたエンジンフィール、扱い難さを解決したいということで・・・
 
パワーはハードに任せて、ソフトはハードを長期間良いコンディションでいられるようにと、
 
こちらのエンジン仕様に完全合致するように全域のデータを作ります。
 
 
 
燃料は街乗りデータに加えて高負荷高回転まで全域を調整します。
 
エアコンON/OFFでのアイドル安定感、エンジンブレーキの効き変更まで
 
出来る限り乗り易く調整してお引渡しすることができました。
 
 
 
2~3日間お乗りいただいて・・・
 
ECUデータの内容や特性の説明なく「乗りやすくしたつもりです」とだけ伝えたのにもかかわらず、
 
具体的な特徴、フィーリングの違いをいくつも当てられ驚きました。
 
ターボはサイズの大きいものに変更されていたので
 
パワーは勝手に出て公道で扱うには危険なくらいですので、そこはどうでもまあまあ・・・
 
そのこと以外、特に街乗り領域での違い、ダラダラ運転時のアクセルのツキ、
 
マイルドになってほしいところが滑らかになっている、
 
ほか回転の落ち方など… 1000~4000rpmまでの普段走る上では
 
一番使うところの変化を味わっていただけたようです。
 
「私の感性に合っていてとても気に入りました。ありがとうございます。」とのお言葉をいただきました。
 
お世辞も含まれているかとは思いますが施工させていただいた甲斐がありました。
 
 
 
 
お車返却後、1ヶ月以上が経ちました。
 
それまでも日々オーナーさまからお知らせが入ります。
 
「あれからエンジンは良好で、遠距離ツーリングもできて、
 
車を購入後のお披露目ができていなかったご友人さまたちにも愛車の紹介が気持ちよくできた。
 
不調は一度も出ておらず、安心して走行できている」とのお言葉をいただきました。
 
 
 
 
これにて作業完了と致します。ご依頼ありがとうございました。
 
 


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